さて、ムネリンこと川﨑宗則の英語が素晴らしいです。2012年から米メジャーリーグの舞台で活躍している川崎選手の英語が完璧すぎて感心しきりなのです。
完璧といっても、文字通りに“完璧”なわけではありません。川崎選手は、むしろ生まれも育ちも日本なバリバリのブロークン・イングリッシュ野郎です。ただ、海外の環境にあって、日本人としていかにコミュニケートするかという姿勢。そのアティテュードの部分が完全無欠のレベルだと思うのです。
まずは2013年5月の試合後インタビューの模様をどうぞ。
まぁ、堂々としています。その姿勢が異なる文化・習慣を持つ人達の心を開かせるのでしょう。ムネリンがかの地で愛される存在になっているのがよく伝わってきます。
こちらはその後しばらく経ち、ドレッシングルームでのインタビューに応える川崎です。
「I’m excited(エキサイトしているよ!)」と言うべきところを「I’m exciting(俺はエキサイティングなやつだ!)」とベタな文法のミスも見られるムネリン。しかし、そんなことはおかまいなしで、何やらペラペラであるかのような“雰囲気”を漂わせています。有無をいわせぬムードを醸し出しています。
今の表現は正しくないんじゃないか?? 今恥ずかしい思いをしているんじゃないか?? そんなことはオールすべて知ったことじゃないわけです。レポーターも思わず「Your English is getting very good」と川崎の英語の上達っぷりを賞賛しています。実際のスキルなんてものは後からどんどんついてくるでしょう。
そして球場でパイ投げの祝福を受けてから約1年。手に持ったメモの英語を棒読みしていた川崎がチームメイトの助けもカンペの力も借りず、現地のTVショーにたった一人で登場します。
番組ホストのアメリカ人2名を大いに笑わせます。悶絶させます。川崎本人のインタビュー中の言葉を借りるならば「Awesome(オーサム)」です。素晴らしいです。
「アメリカのどこのシティーが好き?」と問われ、「それはもちろんマクドナルドだ!」と相変わらず真顔でとんちんかんな回答をしたりもするわけですが、そんなミステイクなどもちろん気にしません。「He doesn’t give a shit(知ったこっちゃない)」なのです。
日本の首都“東京”に話が及ぶと、「う〜ん、東京はあんまりだよ。遊びに来るなら僕が住む福岡のほうがずっといい」と東京消耗論と地方についての持論も展開。ブロークンでも、自身のオピニオンはちゃんと語ります。
俺はからかわれてるんじゃないか。バカにされてるんじゃないか。人種差別されてるんじゃないか。そんな発想とコンプレックスに取り憑かれて、トライすることさえやめてしまう。それこそが何よりも不毛なことです。
とにかく「やる」こと。Keep tryingすること。文法など細かいことももちろん大切。でも細かいことは後からついてくればいい。
川崎は特別だ。生まれついての明るい人間だ。彼は私たちとは違う。そんな風に考えるかもしれません。ただ彼が2013年のシーズン中にメジャーリーグの過酷な競争もあって、円形脱毛症を患っていたのはよく知られていることです。クヨクヨしない人間などいないということでしょう。川崎も我々と同じ普通の人間なのです。
最後に。今から20年も前に日本の英語教育に警鐘を鳴らす男がいたことをご存知でしょうか? その男の名は、志村けん。日本の英語教育の現場にいるすべての人間は、まずこのコントとそこに込められたメッセージを直視して、今度こそ真に突っこんだ議論を始めてほしいものです。一人でも多くの日本人が、川崎のように世界で活躍できるようになることを願って。